2010年8月14日土曜日

モラトリアムな街の風に揺られ

誰にでも優しい君は、誰からも愛され、

まだ若くて、美しくて、その優しさは無限だと思っているかもしれないが、

だけどそのままでいけば、君はいつか破滅を迎えるんだ。

みんなが優しくしてくれる、だから君はその人たちに心を許すんだよね。

ただ、この街に揺らいで、生きていく人たちには見たくない「未来」があるんだ。



人生がただの暇つぶしなら、生きていくには易しい街さ。

愛嬌をふりまき、酒を呑んでは意味の無い会話を重ね、そうして時間は過ぎていく。

朝日が昇るころに眠りにつき、目覚めた頃にはまた夜がやってくる。



煌びやかなネオンの下の蝶や花たち、

だが日の当たる明るいところに出てみればわかる。


そう、お前たちは以外ともう「大人」なんだ。

お前に優しい皆を大切にしたい気持ちは分からなくもない。

そうやって生きてきたんだし、そうやってしか生きて来れなかったのだから、

変える勇気が湧かないんだよね。



でも、体も心も一つしかないんだよ。

全てを大切にしようとしてたら、
いつかその優しさは君自身を覆いつぶし、思わぬときに、大事なものを失う。
ひょっとしたら一番大事なものを失う。



だから、人は大切なものに順番をつけるんだ。

一番大事なものを決めて、まずはそれを守る。

そして、心は痛むけど、いくつかの大事なものを諦め、切り捨て、
そうやって人は「大人」になっていく。



ぬるま湯につかって傷をなめあうこの街と、お前の優しさと酒は触媒になってるんだ。

そして、煌びやかなネオンは明るく眩しいけど、本当に映すべきものを隠してしまう。



そういう僕も、君の優しさに助けられ、癒され、なんとかやってきた。

だが、大人になろうとしてもがき始めた君が、今、気づきつつあるのなら、
今は、もうその優しさに甘えるわけにはいかない。

今優しさを口にすれば、結局それは君を傷つけていく。



君が君であるために、

僕が僕であるためにも、



モラトリアムな街の風に揺られながら、

君も僕も、

今はこれに勝たなくちゃいけない。